それはとにかく暑い日のこと。
お腹にいる子供の性別が分かった日。
こんな日のことをいつか忘れてしまうだろうか。
過去を忘れないために、未来に思い出すためにこの日記を書いている。
戸田市立図書館の駐車場で観た、送られてきたエコー検診の動画。
オーケストラのようなセミの声。
車の横を通り過ぎた青いポロシャツのおじいさん。
はしゃぎながら図書館へ駆けていく二人の子供。その後をついてく母親は妊婦だった。
今日は隣の高校から軽音部が練習するアンディモリは聴こえてこない。
結局届いたエコー検診動画は前半の5分しか送られてこなくて、(動画が長すぎて勝手に切られていた)性別を知ったのは家に帰ってからのことだった。
性別が分かった途端、居ても立ってもいられず部屋を飛び出した。丁度クリーニングに出していたスラックスもあるので引き取りに行こう。クリーニングの伝票とIpodを手に取る。選曲したのはsyrup16gのrebornだった。何故だかわからない。気づいたらこの曲を選んでいた。
家を出る。夕方になっても蒸し暑い。シロップが聞こえてくる。
昨日より今日が素晴らしい日なんて、分かってる そんなこと 当たり前のことさ
うわー、センチメンタル気取ってるー。痛いー。なんて客観視しながら久しぶりに聴くこの曲を噛み締めていた。家の周りを少し歩いた。
結局クリーニングは盆休みで空いていなかった。でも、そんなことはどうでもよかった。
伝票とIpodを手に持ったまま、家に帰った。
現金なもので、性別が分かった途端一気にリアリティが増した。
「ちっちゃい君が生まれてくるのかー」
「おそらく太りやすい体質だろうねー」
「きっと静かな子だよ」
なんて君は口にしていた。